挑戦を、どんぶり勘定で終わらせない。新商品への投資と撤退ラインを見える化。

画像はAIで制作したイメージであり、実際の支援先・商品ではありません。

新商品を出したい。今のお客様に、新しい価値を届けて売上を伸ばしたい。

その一方で、「開発にいくら使えるのか」「在庫を持っても資金は足りるのか」「借りたお金を返せるのか」が見えず、判断に迷っていないでしょうか。

今回ご紹介するのは、年商約1億円の小売業で、既存市場へ新商品を投入し、売上3億円を目指す成長戦略を財務面から支援した事例です。新しい市場への参入ではなく、現在のお客様とも重なる市場で、既存事業を広げる取り組みです。

民間金融機関と日本政策金融公庫の協調融資で3,000万円を調達し、新商品は開発を終え、9月から販売を開始しています。販売の成果はこれからです。この事例でお伝えしたいのは、挑戦に必要なお金と、追加投資を止めるラインを、発売前に整理したことです。

「余裕があるから挑戦する」はずが、返済後の現金は増えていなかった

社長は当初、今の事業に余裕があり、その余力で新商品に挑戦するという認識でした。しかし、実際のキャッシュフローと借入の返済額を照らすと、手元資金の収支はトントン、あるいは若干のマイナスになる状況が見えてきました。

利益が出ていることと、次の投資に使える現金が増えていることは、同じではありません。借入の元金返済まで含めて見ることで、会社の現在地が変わって見えたのです。

だからといって、現状を続ければよいとも考えていませんでした。今のままでは先細りになり、将来への夢を持てない。社長は、成長への挑戦を選びました。

財務支援の役割は、その思いを数字の裏付けがないまま進めることではありません。どこまで資金を使えるか、返済を続けられるか、どの時点で立ち止まるか。社長が判断するための材料をそろえます。

開発費だけでなく、売れるまで・成長した後のお金を見積もる

新商品には研究開発費だけでなく、最初に持つ在庫、発売後に軌道に乗るまでの運転資金が必要でした。この会社では、計画上、在庫が現在の約2倍となり、経常運転資金も2倍以上必要になる見通しでした。

そこで、売上3億円の規模になったとき、日々の仕入れや入金待ちを支えるために、いくらの資金が必要かを計算しました。さらに、開発費・初期在庫費と、事業が軌道に乗るまでの期間を資金計画に織り込みます。

目標売上だけを描いても、売れる前の支払いはなくなりません。販売が進むまでの間にも返済は進みます。その両方を並べ、手元資金がどう動くかを確認しました。

確認したこと判断したいこと
売上3億円規模の経常運転資金成長した事業を支える現金が足りるか
研究開発費・初期在庫費販売前に、どれだけ現金が出ていくか
軌道に乗るまでの期間売上・入金が育つまで資金が持つか
借入の返済と現預金残高返済しながら、必要な手元資金を守れるか

これらをもとに、借入額を3,000万円としました。返済の進み方と事業が軌道に乗るペースが計画どおりであれば、現金が2,000万円を下回らない計画です。これは将来の見通しであり、実際に維持できたという結果ではありません。

撤退ラインを決めることで、挑戦の判断軸を持つ

今回の計画では、将来の現金残高が2,000万円を下回ることが確定した時点で、新商品の追加生産・仕入れを止めるという撤退ラインを持っています。実際の残高が2,000万円を切るまで待つのではなく、資金の見通しから判断します。

ここでいう撤退は、会社全体をやめることではありません。新たな在庫を持たず、すでに作った商品は基本的に売り切り、資金を回収することです。追加の資金流出を止め、返済に必要な資金を守るための判断です。

なお、追加仕入れを止めても、在庫が直ちに現金へ変わるわけではありません。販売・回収の状況と、すでに決まっている支払いは、その後も確認していきます。

2,000万円は、この会社の返済と資金計画を踏まえて定めた個別のラインです。すべての会社に共通する安全水準ではありません。

どれだけ使えるかも、どこで止めるかも分からないままでは、追加投資のたびに迷います。先に判断軸を持つことで、挑戦を続けるか、止めるかを数字で話し合えるようにします。

融資・発売の後も、月次と週次で追いかける

融資は、民間金融機関と日本政策金融公庫の協調融資で実行されました。新商品は開発を終え、9月から発売中です。売上3億円はこれから目指す目標であり、達成実績ではありません。

発売後は、月次で管理会計、週次で資金繰り表を確認します。加えて、毎週必ず口座残高を共有してもらいます。想定よりも早く現金が減っていれば、その理由を確認します。

月次で事業の進み具合を見ながら、週次では実際のお金の動きを押さえる。計画との違いを見つけ、その理由と次の対応を話し合う。融資を受けた後も、この確認を続けることが支援の一部です。

項目公開時点の状況
支援開始時の事業規模年商約1億円
資金調達3,000万円の協調融資を実行済み
新商品開発完了・9月発売、販売成果はこれから
売上目標3億円(未達成の計画値)
現金残高計画どおりなら2,000万円以上を維持する見通し
追加投資を止める基準将来の現金が2,000万円を下回ることが確定した時点

新商品への挑戦を、どんぶり勘定で終わらせないために

挑戦したい商品や、届けたいお客様がいる。それでも、お金の見通しが立たずに足が止まってしまう。

そのとき必要なのは、借りられる金額だけを知ることではありません。必要なお金、返せる見通し、追加投資を止める基準を、一つの計画につなげることです。

Issue-Consultingでは、資金繰りの改善に加え、新商品開発や事業拡大の投資判断も財務面から支援しています。埼玉県入間市を拠点に、県内全域で訪問支援に対応しています。

「いくら使って大丈夫か分からない」「売れるまで資金が持つか不安」「借りた後に返せるかを確認したい」。まずは初回30分のオンライン無料相談で、今の悩みをお聞かせください。計画が完成していなくても構いません。

新商品の投資判断を相談する

上野 貴司
株式会社 Issue-Consulting 代表取締役/中小企業診断士

代表へのヒアリングに基づく匿名事例です。融資実行・発売は実績、売上目標と将来の現金残高は計画として区別しています。