資金繰りの問診:いま、どの症状がありますか?

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気になっているお金の症状

選ぶと、この下に症状ごとの直し方が出ます。選ばずに、下の「10の直し方」から読んでも大丈夫です。

資金繰りの改善は、お金の流れ、お金の置き場所、もうけの順に進めます。利益から直すのではなく、現金から利益を見ることが出発点です。

この記事は、「資金繰り改善の前に確かめたい、苦しくなる会社の10の症状」の答えにあたります。症状と同じ番号で、一つずつ直し方を書きました。

資金繰り改善の前に確かめたい、苦しくなる会社の10の症状

融資を何度も受け、税理士にも相談し、できることはしてきた。それでも苦しさが変わらない社長に向けて書いています。どの項目も、これまでやってきたこと、それでも直らなかった理由、本当の直し方、そして直すときにむずかしいところ、の順に書いています。

お金の流れを整える

9. 不安で夜も眠れない → 資金繰り表を、社長自身の道具にする

資金繰り表なら、知っている。融資を受けるたびに、銀行に言われて作ってきた。けれど、それは借りるための書類で、融資が決まれば、もう見ることはない。数字も、そのときに合わせて、なんとなく埋めてきた。決算の話では「利益が出ているので大丈夫です」と言われる。それでも、支払日が近づくと落ち着かない。

直らなかったのは、資金繰り表が「銀行のための書類」になっていたからです。一度出したら終わりの表では、来週、来月のお金は見えません。そして、決算書の利益は、去年までの結果です。社長が知りたい「来月、お金が足りるか」は、どこにも映っていません。

直し方は、資金繰り表を、社長自身が毎週使う道具に変えることです。入ってくるお金と出ていくお金を、週ごとに先まで並べ、実際の動きとずれたら直します。給料、仕入れ、返済、税金、社会保険料。出ていく日と金額を先に置くと、「月末に500万円足りない」ことが、3週間前にわかります。3週間あれば、入金を早めてもらう相談も、支払日の相談も、資金の手当ても、落ち着いて打てます。不安は、「やること」に変わります。

しかも、毎週使っている資金繰り表は、そのまま銀行への説明にもなります。いつ、何のために、いくら必要なのか。数字で答えられる会社は、話が早く進みます。

あわせて、手元に残しておくお金の目安を決めます。目安は、1週間に出ていくお金の平均の約2倍です。たとえば年商3億円の会社なら、1週間に出ていくお金はおよそ580万円。手元には約1,150万円を残します。運用を考えるのは、この額を残したうえで、それでも余るお金だけです。

表を作ることは、これまでもしてきたはずです。むずかしいのは、正しい数字で作り、毎週ずれを直し、先まで更新し続けることです。さらに、利益の数字と現金の数字をつなげて見なければ、表が正しいかどうかもわかりません。現金と利益を見える形にすることは、実は簡単なようで一番、難しい作業なのです。

8. 支払いを待ってもらって、なんとか回している → 足りない理由を、分けて見る

社長は頭を下げて、支払いを待ってもらってきた。借りられるときには借りて、たまった支払いを一度に済ませたこともある。社長自身の給料も、後回しにしてきた。それでも、しばらくすると、また誰かに待ってもらっている。

直らなかったのは、「足りない分」を埋めることだけをしてきたからです。待ってもらうのも、借りて払うのも、今月の穴をふさぐ手です。けれど、「なぜ毎月足りないのか」には手をつけていません。原因が残っている限り、穴は来月もあきます。

直し方は、足りない理由を、分けて見ることです。毎月の不足には、たいてい、いくつかの理由が混ざっています。

たとえば年商3億円(月商2,500万円)の会社で、毎月300万円足りないとします。分けてみると、そのうち200万円は「入金は2か月後なのに、支払いは1か月後」という日のずれ、100万円は「返せるお金より重い返済」だった、ということがよくあります。日のずれなら、入金と支払いの条件を見直します。返済の重さなら、借り方を見直します(1・2)。理由がちがえば、打つ手もまったくちがうのです。

税金や社会保険料は期日を過ぎてから相談するより、先に相談するほうが、分けて納める仕組みを使える場合があります。社長の給料も、払えない額を決めたままにせず、次の決め直しの時期に、払える額にそろえます。

足りない理由を分けるには、入金、支払い、返済、税金を月ごとに並べ、決算書の数字とつなげて見る必要があります。仕入れ先、銀行、役所のそれぞれに、いつまでに、いくら払えるのかを、きちんと説明できる数字もいります。足りない理由を分けて見ることは、支払いを待ってもらうより、ずっと根気のいる作業なのです。

3. 消費税が払えない → 消費税を、毎月たまる「預かり金」として分けておく

納税の月が近づくと、あわててお金を集める。足りなければ借りて納める。それでも足りなければ、分けて納める。納める額を知るのは、いつも決算が終わってから。毎年のことなので、「消費税はそういうもの」と思ってきた。

直らなかったのは、消費税を「決算のあとに来る請求」として見てきたからです。本当は、消費税は売上のたびに、毎月少しずつ預かっているお金です。それを自分の会社のお金と同じ口座に混ぜたまま使っているので、納める月にだけ、急に大きな支払いが来たように感じるのです。

直し方は、消費税を、毎月たまっていく「預かり金」として分けておくことです。毎月の試算表から、その月に預かった消費税と支払った消費税の差を出し、その額を、ふだん使う口座とは別にとっておきます。

たとえば年商3億円の会社で、納める消費税が年1,500万円なら、毎月約125万円です。年の途中で前払いする月があれば、その月と額も、資金繰り表に先に入れておきます。毎月分けておけば、納める月に慌てることはなくなります。足りなくなって借りる、分けて納めさせてもらう、ということも起きなくなります。

ただ、毎月の額を正しく出すには、月ごとの試算表が遅れずに、正しく締まっている必要があります。消費税がかかる取引とかからない取引の区分けも、正確でなければなりません。そして何より、今月から125万円を分けておくと、今月の支払いが足りなくなる会社が少なくありません。預かり金を分けることと、毎月の支払いを回すことを、同時に成り立たせる。ここが、消費税を直すうえで一番むずかしいところなのです。

4. 売上は増えているのに、現金が増えない → 売上の計画と一緒に、増えるお金の計画を立てる

売上は伸びている。新しい取引先も増えた。「売上が伸びれば、資金繰りは大丈夫、楽になる」と言われ、自分でもそう思ってきた。お金が足りなくなれば、そのたびに借りて間に合わせてきた。それでも、忙しくなるほど、お金の心配が増えていく。

直らなかったのは、成長に必要なお金を、足りなくなってから用意してきたからです。売上を伸ばす計画はあっても、それに合わせて「どれだけお金が寝てしまうか」の計画がありません。だから、売上が伸びるたびに、あとから穴があきます。

直し方は、売上の計画と一緒に、増えるお金の計画を立てることです。売上が増えると、売掛金や在庫が増え、その分のお金が寝てしまいます。その額を、売上が増える前に計算し、用意する方法と時期を先に決めておきます。

もう一つは、お金が寝ている期間そのものを短くすることです。たとえば年商3億6,000万円(月商3,000万円)で、入金が売上の2か月後なら、売掛金は6,000万円。これが1か月半後の入金になれば、4,500万円です。入金を半月早めるだけで、1,500万円のお金が手元に戻ってきます。在庫を持つ会社なら、在庫を減らすことも同じ効き目があります。

ただ、増えるお金を計算するには、売掛金・在庫・買掛金が、それぞれ何日分たまっているかを正しくつかみ、売上の伸びと掛け合わせる必要があります。入金や支払いの条件を変えるには、取引先との話し合いもいります。用意するお金を借りるなら、伸びる売上に合わせた借り方を、銀行に数字で説明しなければなりません。成長の計画を、お金の計画に置きかえる。これは、売上を伸ばすことと同じように、とても重要であり、むずかしい仕事なのです。

6. 節税をしたら、急に資金繰りが苦しくなった → 「税金」ではなく「残すお金」で決める

決算が近づくと、「今年は利益が出そうなので、何か手を打ちましょう」と言われる。保険に入ったり、物を買ったりして、税金を減らしてきた。税金が減ると、得をした気持ちになる。それなのに、決算が終わると、手元のお金が心細い。

直らなかったのは、決算の直前に、利益の使い道を、税金の額だけを見て決めてきたからです。「税金がいくら減るか」は見ていても、「手元にお金がいくら残るか」は見ていません。

直し方は、税金ではなく、残すお金で決めることです。決算の直前ではなく、数か月前に、今期の利益の見込みと、税金を払ったあとに残るお金を出しておきます。

たとえば利益が1,000万円の会社なら、税金を約300万円払っても、約700万円が残ります。1,000万円を使って税金を0にすれば、残るお金も0です。多くの場合、会社を一番強くするのは、税金を払って700万円を残すほうです。残した利益は、決算書の上で会社の体力として積み上がり、銀行から見た会社の姿も変わります。本当に必要な物は、決算の前にあわてて買うのではなく、年の初めから計画して買います。

ただ、決算の数か月前に利益の見込みを出すには、月ごとの試算表が、早く、正しく締まっている必要があります。税金の額と、払ったあとのお金、来期の返済や投資を並べて判断することもいります。そして何より、税金を払うことは、どうしても損に感じます。税金を払ってお金を残すことを、会社を強くする選択として受け入れる。数字の判断より、実はこの気持ちの切りかえが、一番むずかしいのです。

お金の置き場所を整える

1. 返しているのに、借金が減らない → お金の使い道に合わせて、借り方を決める

運転資金が足りなくなるたびに、銀行から借りてきた。「借入は長期で、できるだけ長く借りておくと安心です」と言われ、5年、7年と、長い返済で借りてきた。毎月、きちんと返している。それなのに、1年もすると、またお金が足りなくなる。

直らなかったのは、借りたお金の「使い道」と「返し方」が、ずれていたからです。仕入れから入金までを立て替える運転資金は、入金されても、すぐ次の仕入れに回ります。会社が仕事を続けるかぎり、ずっと必要なお金です。それを毎月の返済で減らしていけば、返した分だけ、運転資金が足りなくなります。返済を長くすれば、毎月の額は軽くなります。けれど、返すお金がどこから出てくるのかは、何も変わっていません。

直し方は、お金の使い道に合わせて、借り方を決めることです。まず、会社に本当に必要な運転資金の額を出します。何年も使う設備のお金は、利益と減価償却費から、何年もかけて返す形で借ります。ずっと必要な運転資金は、仕事の流れに合わせて、毎月の返済で減らしていかない形で借ります。

たとえば、症状編の会社。運転資金の5,000万円を5年で返すと、返済は年1,000万円。返せるお金は年600万円なので、毎年400万円足りませんでした。運転資金の分を、毎月の返済で減らさない形に組み直せば、この年1,000万円の返済がなくなります。毎年400万円足りなかった会社が、毎年600万円残る会社に変わるのです。借金が消えるわけではありません。利息も払います。変わるのは、毎月出ていくお金のかたちです。

ただ、借り方を変えるには、本当に必要な運転資金の額を、決算書と毎月の数字から正しく出す必要があります。どの借入をどう組み直せるかは、決算の中身と、銀行とのこれまでの取引で変わります。銀行が判断するには、毎月の試算表や資金繰り表が、早く、正しく出てくることも欠かせません。会社のお金が、いま、何のために、どこに、どれだけ置かれているのか。それを数字で説明できるようにすることは、思っている以上にむずかしいのです。

2. 借りるたびに、毎月の返済が増えていく → 借入を1本ずつ足さず、全体で組み直す

返済が進むと、「返していただいた分を、またお貸しできます」と声がかかる。借りられるときに借りておこうと、そのたびに借りてきた。借入の本数が増え、毎月の返済日も増えた。お金は借りられているのに、月末が来るたびに苦しくなる。

直らなかったのは、借入を1本ずつ、そのときの不足に合わせて足してきたからです。1本ずつ見れば、どれも無理のない返済です。けれど、全部を足した毎月の返済が、返せるお金に収まっているかどうかは、見ていません。だから、借入の残高は同じなのに、返済だけが重くなっていくのです。

直し方は、借入を1本ずつ足すのではなく、全体を並べて組み直すことです。まず、すべての借入を1枚の表に並べます。借りた日、残高、毎月の返済、金利、そして何のために借りたのか。次に、設備のお金と運転資金を分けます。設備の分は、返せるお金(税引後利益+減価償却費)の範囲で返す形に。運転資金の分は、1で書いたように、毎月の返済で減らしていかない形に組み直します。

たとえば、症状編の会社。残高は5,000万円のままなのに、毎月の返済は約116.7万円(年1,400万円)にふくらんでいました。このうち、運転資金として本当に必要な額が3,000万円だったとします。その分を組み直し、残る2,000万円を5年で返せば、返済は年400万円、月々約33.3万円。返せるお金の年600万円に収まり、毎月の返済は約83万円軽くなります。

組み直すときには、順番があります。まず、長く返す借入と、仕事の流れに合わせて借りる借入の割合を直します。それでも返済が重ければ、今の借入を、条件の合う借入に借り換えます。次に、何本にも分かれた借入を1本にまとめます。返済そのものを減らしたり止めたりしてもらうのは、いちばん最後です。この順番を守れば、銀行との信頼を保ったまま、毎月の返済を軽くしていけます。支援先でも、こうした借り方の組み直しをしてきました。

ただ、組み直すには、借入の一覧を正しく作り、どの借入が何のためのお金なのかを、決算書とつなげて分ける必要があります。組み直しは、取引銀行と相談しながら進めるもので、応じてもらえるかどうかは、決算の中身とこれまでの取引で変わります。そのとき銀行が見るのは、毎月の数字がきちんと出てきて、借りたお金を計画どおりに回せる会社かどうかです。借入を1本ずつではなく、会社全体のお金として組み立てる。それは、借りることより、ずっとむずかしい仕事なのです。

5. 設備を買ったら、急にお金が回らなくなった → 長く使う設備は、長く返すお金で買う

借金は、できるだけしたくない。利息を払うのも、もったいない。「自分のお金で買えるなら、そのほうが健全です」と言われ、トラックも機械も、手元のお金で買ってきた。決算書を見れば、借入は増えていない。それなのに、設備を入れるたびに、月末の支払いが苦しくなる。

直らなかったのは、利息の額と借入の少なさだけを見て、買い方を決めてきたからです。設備を買うと、決算書の上では、現金が「設備」に形を変えます。会社の財産の合計は変わりません。けれど、設備で給料や仕入れは払えません。何年も使う設備を、来月の支払いにあてるはずのお金で買えば、毎月の支払いにあてるお金が、そのまま消えてしまうのです。

直し方は、長く使う設備は、長く返すお金で買うことです。返す年数は、減価償却の年数(設備ごとに法律で決められた年数)にそろえるのが一番です。

たとえば、症状編の3,000万円のトラック。5年で減価償却するなら、5年で返す形で借ります。返済は年600万円、月々50万円です。このトラックの減価償却費も、年600万円。お金の出ていかない経費の分で、ちょうど返済をまかなえます。計画どおりに利益が出ていれば、設備を買っても、お金の流れはくずれません。そして、手元の3,000万円は、給料や仕入れの支払いのために残ります。利息は、たとえば金利2%なら、5年で合わせて約150万円。この150万円で、5年のあいだ、手元のお金の心配を減らせるのです。

借りるのは、買う前です。手元のお金で買ったあとでは、設備のための借入として相談しにくくなることがあります。どの設備を、いつ、いくらで買うのか。それを先に決めて、買う前に銀行に相談します。

ただ、借りて買うかどうかを決めるには、その設備が何年使えて、どれだけのもうけを生むのかを、数字で見通す必要があります。今ある借入の返済と合わせても、返せるお金に収まるかも確かめなければなりません。手元にいくら残しておくべきかも、決めておく必要があります。そして、返済の支えになるのは、計画どおりの利益です。設備を使う年数と、生み出すもうけと、毎月の返済を、買う前に一枚の表で見通す。これが、思っている以上にむずかしいのです。

7. 社長が自分のお金を、会社に入れている → 社長のお金を、会社の体力として位置づける

支払いに足りない月は、自分の貯金から会社に入れてきた。社員や取引先に迷惑はかけられない。「社長からのお金なら、利息もいらないし、返す期限もない」と言われ、自分でもそれが一番早いと思ってきた。会社は回っている。けれど、社長の貯金だけが、年々減っていく。

直らなかったのは、足りない分を、社長のお金で黙って埋めてきたからです。社長が入れたお金は、決算書では「役員借入金」として残るだけで、利益の数字には表れません。資金繰り表には、役員借入金の入金として出てきます。けれど、その入金で支払いが間に合えば、それで終わりにしてきました。その入金こそが、会社が足りなかった額そのものだと、見ないままにしてきたのです。

直し方は、社長の財布と会社の財布を分けて、足りない額を会社の数字にすることです。まず、資金繰り表の役員借入金の入金を、何年分か並べます。いつ、いくら、何の支払いのために入れたのか。それが、会社が本当に足りなかった額です。

たとえば、症状編の会社。3年で3,600万円を入れていれば、会社は年1,200万円、月にならすと約100万円足りなかったことになります。次に、その理由を分けて見ます。返済が返せるお金より重いのか(1・2)、入金と支払いの日がずれているのか(4・8)。理由がわかれば、会社の中で直す手を打てます。それでも足りない分は、足りなくなってから社長が入れるのではなく、先に会社の資金繰りの計画に入れて、会社として用意します。

すでに入れたお金も、放っておかずに、扱いを決めます。役員借入金は、決算書の上では借金です。けれど、社長が当分返してもらわないと決めたお金は、銀行から見れば、会社の純資産(自己資本)とほとんど同じ、会社の体力です。

たとえば、純資産が1,000万円のマイナス、つまり借金が財産より多い会社でも、社長からの3,600万円を当分返してもらわないと決めて銀行に伝えれば、実質は2,600万円のプラスの会社として見てもらえる場合があります。社長の3,600万円は、消えたのではありません。会社の体力として、決算書の中に残っているのです。だからこそ、足りなくなるたびに入れて、余ったら返してもらう、というお金にせず、会社の体力として置いておくお金だと、はっきり決めておきます。

ただ、足りなかった額を出すには、何年分もの入金の記録を、決算書とつなげて整理する必要があります。役員借入金をどう扱うかは、税金や銀行からの見え方にもかかわるので、先の返済や資金繰りと合わせて決めなければなりません。そして何より、責任感の強い社長ほど、会社の足りなさを自分で背負ってしまいます。会社の足りなさを、社長ひとりの問題ではなく、会社の数字として正面から見る。これが、社長にとって一番むずかしいことなのです。

もうけを見直す

10. 利益はあるのに、現金が増えない → 現金から、利益を見る

決算のたびに、「利益が出ているので、今のままで大丈夫です」と言われてきた。赤字になりそうな年には、「黒字にしておきました」と、決算書を整えてもらったこともある。決算書は黒字で、銀行にも出せる。それでも、通帳のお金は増えていかない。

直らなかったのは、利益から現金を見てきたからです。利益が出れば、お金はあとからついてくる。そう考えて、決算書の利益を見てきました。けれど、決算書の見た目を整えても、お金は1円も増えません。利益は、計算の上のもうけです。そのもうけは、借入の返済、売掛金や在庫、設備、そして消費税へと、利益の計算には出てこない形で出ていきます。利益から見ているかぎり、お金の出ていく道は見えないのです。

直し方は、見る向きを逆にして、現金から利益を見ることです。まず、この1年で出ていくお金を先に並べます。借入の返済、設備、増える売掛金や在庫。そして、手元に残しておきたいお金。それをまかなうために、いくらの利益が必要かを、逆に計算します。消費税は、利益からではなく、毎月の預かり金として分けておきます(3)。

たとえば、症状編の会社。返済が年1,000万円で、手元に年500万円を残したいとします。減価償却費の200万円を引くと、税金を払ったあとの利益が1,300万円いります。税金を3割とすると、税引前の利益は約1,860万円。今の利益1,000万円では、とても足りません。

ところが、借入を組み直して返済を年400万円にできれば(1・2)、税金を払ったあとの利益は700万円、税引前の利益は1,000万円で足ります。今の利益のままで、毎年500万円が残るのです。お金の流れと置き場所を先に整えると、必要な利益そのものが変わります。

もうけの見直しは、そのあとです。それでも必要な利益に届かないとき、はじめて売上と経費の計画を見直します。利益は、目指す数字ではなく、必要な現金から決まる数字なのです。

お金の流れから、もうけまでを、一本の線で

10の直し方は、ばらばらではありません。まず、お金の流れを整える(9・8・3・4・6)。次に、お金の置き場所を整える(1・2・5・7)。そのうえで、もうけを見直す(10)。この順番で、ひとつにつながっています。

ただ、この順番どおりに進めるには、この先1年のお金の出入りと、決算書の置き場所と、毎月の利益を、同じ数字でつなげる必要があります。順番をまちがえて利益から直そうとすると、利益は増えたのに、お金は増えないということが、また起こります。

会社の状況に合わせて、お金の流れ、資産と借入、利益を確かめ、取り組む順番を考えます。

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次の一歩

どの直し方が自分の会社に合うのか、どこから手をつけるのかは、会社ごとにちがいます。同じ症状でも、原因や、動かせるお金の大きさ、銀行とのこれまでの取引がちがうからです。

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よくある質問

Q. 資金繰りの改善は、何から始めればいいですか?

A. お金の流れ、お金の置き場所、もうけの順に進めます。利益から直すのではなく、現金から利益を見ることが出発点です。まずは資金繰り表を、社長自身が毎週使う道具に変えることから始めます。

Q. 手元にはいくらお金を残せばいいですか?

A. 目安は、1週間に出ていくお金の平均の約2倍です。たとえば年商3億円の会社なら、1週間に出ていくお金はおよそ580万円、手元には約1,150万円を残します。

Q. 運転資金は、長期で借りたほうが安心ですか?

A. 返済を長くすれば、毎月の額は軽くなります。けれど、返すお金がどこから出てくるのかは変わりません。ずっと必要な運転資金は、仕事の流れに合わせて、毎月の返済で減らしていかない形で借ります。どう組み直せるかは、決算の中身と銀行とのこれまでの取引で変わります。

株式会社Issue-Consulting(イシューコンサルティング)/代表 上野貴司(中小企業診断士)/埼玉県入間市

上野 貴司
株式会社 Issue-Consulting 代表取締役/中小企業診断士

経営支援の経験をもとに、お金の動きを確かめるポイントを紹介します。

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