資金繰りが苦しくなる原因の多くは、利益と現金のズレにあります。利益が出ていても、借入の返済、消費税、売掛金や在庫、設備の支払いで、お金は先に出ていくからです。

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資金繰りが苦しいとき、多くの社長は、すぐに「どうすれば楽になるか」を探します。

でも、体の調子が悪いとき、まず症状を確かめてから薬を選ぶように、会社のお金も、何が起きているかを知るのが先です。原因がちがえば、打つ手もちがうからです。

ここでは、資金繰りが苦しくなる会社によく見られる10の症状を、代表の上野が、支援の現場で見てきたことをもとに紹介します。直し方は書いていません。まず、自分の会社にあてはまるものがあるか、確かめてみてください。

1. 返しているのに、借金が減らない

中小企業、特に創業10年未満の会社によく見られるのですが、ほんらい短期で借りるべきお金(経常運転資金)を、長期(毎月返済)で借りているケースです。

経常運転資金とは一般的には、「売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金+支払手形)」で計算されます。物を仕入れてから、物が売れ、そのお金が入金されるまでのサイクルで、入金までの立て替えのお金という位置づけです。

さて、ここに落とし穴があります。経常運転資金で借りたお金は、入金されてもすぐ次の仕入れに回るお金なので、毎月の返済に回す余裕はありません。 長期借入金を返す原資は、おおまかには、「税引後利益+減価償却費」です。経常運転資金の5,000万円を5年で返すと返済は年1,000万円。返せるお金(税引後利益+減価償却費)が600万円なら、毎年400万円足りません。その結果、半年・1年たつ頃には経常運転資金が足りなくなり、また資金繰りが苦しくなるのです。

「資金繰りが苦しくまた借りる」「返済しているのに借金が増えていく」「毎年借入をしないと資金繰りができない」というのはこの負のサイクルに陥っている典型的な症状です。

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2. 借りるたびに、毎月の返済が増えていく

借入から2〜3年後(元金返済が進んだ頃)に、足りなくなった運転資金を増やすために借入をするケースです。

5,000万円を5年で返すと返済は年1,000万円(月々は約83.3万円)です。2年経過すると2,000万円返済したことになるのですが、一方で経常運転資金は不足することになります。それを補うために、いわゆる折り返し融資(返した分を、もう一度借りること)を受けることがよくあります。

一見、助かったように見えます。しかし借入本数が増え続ける借り方をすると、毎月の返済額が、雪だるま式に増えていくことになるのです。 2,000万円を5年で返すと返済は年400万円(月々は約33.3万円)です。元の返済(月約83.3万円)もまだ続くので、毎月の返済は合計約116.7万円(年1,400万円)。借入残高は最初と同じ5,000万円なのに、返済は約1.4倍に膨れあがっているのです。

「運転資金を借りるたびに、月々の返済が苦しくなる」「資金繰りが苦しく、運転資金を借りるサイクルが短くなっている」というのは、このサイクルに陥っている危険信号の始まりです。

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3. 消費税が払えない

原則、決算から2か月後、消費税を納める月になると、急に資金繰りが苦しくなるケースです。これは黒字でも赤字でも関係ありません。

消費税は、おおまかには「お客さまから預かった消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を引いた残りを納めます。預かった消費税は、売上といっしょに口座へ入ってきます。そのため、自分の会社のお金と見分けがつきません。

ところが、ここが落とし穴です。預かった消費税は、入ってきた時点で、仕入れや給料の支払いにそのまま使われてしまいます。さらに、給料には消費税がかかっていないため引くことができず、人件費の多い会社ほど、納める消費税は大きくなります。 税抜の売上が3億円なら、預かる消費税は3,000万円。消費税がかかる仕入れや外注が1億5,000万円なら、支払った消費税は1,500万円。差額の1,500万円を納めます。前の年の納税額が大きい会社は、年の途中にも分けて前払いしますが、月に直すと約125万円。これを毎月よけておかないと、納める月ごとに数百万円がまとめて出ていくのです。

「納税のためだけに、お金を借りている」「消費税を分けて払わせてもらっている」「消費税を取られるという感覚がある」というのは、預かったお金を使ってしまっている典型的な症状です。

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4. 売上は増えているのに、現金が増えない

売上が伸びて、会社は忙しい。それなのに、口座のお金はむしろ減っていくケースです。成長している会社ほど起こる現象です。

売上は、請求してから入金されるまでに時間がかかります。そのあいだの「まだ受け取っていない売上」が売掛金です。在庫を持つ会社なら、「まだ売れていない商品」も、お金が形を変えて眠っている状態です。売上が増えると、この売掛金や在庫も一緒に増えていきます。

一見、売上が増えるのは良いことに見えます。しかし、お金の面では逆のことが起きています。売上が増えるほど、「入ってくる前に出ていくお金」が増えるのです。仕入れや給料の支払いは、入金を待ってくれません。 たとえば年商3億円(月商2,500万円)で、入金が売上の2か月後の会社。売掛金は5,000万円です。売上が2割増えて年商3億6,000万円(月商3,000万円)になると、売掛金は6,000万円に増えます。増えた1,000万円は、数字の上では売上でも、まだ手元にないお金です。利益率が5%なら、増えた利益は年300万円。増えた利益よりも、入ってこないお金のほうが大きいのです。在庫も増えれば、その差はさらに広がります。

「忙しいのに、お金がない」「大きな仕事が決まるたびに、支払いが苦しくなる」「売上が過去最高なのに、資金繰りが苦しい」というのは、成長に運転資金が追いついていない典型的な症状です。

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5. 設備を買ったら、急にお金が回らなくなった

新しいトラックや機械を、手元のお金で買った。その数か月後から、急に支払いが苦しくなるケースです。「できるだけ借りたくない」「借りると利息がもったいない」と考える、まじめな社長ほど起こります。

設備は、何年も使うものです。そのため、買った金額は一度に経費にならず、何年かに分けて少しずつ経費にしていきます(減価償却)。設備が生み出すもうけも、何年もかけて少しずつ入ってきます。

一見、借金をせずに買えたので、健全に見えます。ところが、お金は買った日に全額出ていき、戻ってくるのは何年もかけて少しずつです。 たとえば3,000万円のトラックを、手元のお金で買ったとします。5年に分けて経費にするなら、1年の経費は600万円。決算書の上では年600万円の経費でも、通帳からは買った日に3,000万円が消えています。その3,000万円は、本来、来月の給料や仕入れの支払いにあてるはずのお金だったかもしれません。何年も使う設備を、すぐに必要なお金で買うと、設備は残っても、毎月の支払いにあてるお金がなくなるのです。

「設備を入れてから、なぜかお金が足りない」「利益は変わらないのに、通帳の残高だけが減った」「一度減った残高が、何年たっても元に戻らない」というのは、長く使うものを、すぐに必要なお金で買ってしまった典型的な症状です。

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6. 節税をしたら、急に資金繰りが苦しくなった

決算が近づき、今年は利益が出そうだ。税金を少なくしようと、決算の前にあわてて物を買ったり、保険に入ったりする。その数か月後から、資金繰りが苦しくなるケースです。がんばって利益を出した年ほど起こります。

節税は、経費を増やして利益を小さくし、税金を減らすことです。税金が減るのは、会社にとってうれしいことです。

ところが、ここで見落としがちなことがあります。節税で減る税金は、使ったお金の一部だけなのです。 たとえば利益が1,000万円出た会社。税金をおおまかに3割とすると、約300万円を納めて、約700万円が手元に残ります。ここで、決算の前に1,000万円を使って利益を0にすると、税金は0になります。ところが、手元に残るお金も0です。300万円の税金を減らすために、1,000万円のお金を出したことになります。本当に必要な物なら別ですが、税金を減らすことが目的になると、減った税金よりも、出ていったお金のほうがずっと多くなるのです。

「利益が出るとわかると、税金を減らすために何を買おうかと考えてしまう」「節税したのに、手元の現金が減っている」というのは、税金よりもお金が出ていく節税をしてしまっている典型的な症状です。

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7. 社長が自分のお金を、会社に入れている

月末の支払いに少し足りない。そんなとき、社長が自分の貯金から会社の口座へお金を入れて、その場をしのぐケースです。「社員や取引先に迷惑はかけられない」という、責任感の強い社長ほど起こります。

社長が会社に入れたお金は、決算書では「役員借入金」(会社が社長から借りているお金)として残ります。

一見、社長ががんばれば、会社はきちんと回っているように見えます。ところが、社長のお金で穴をうめているあいだは、会社が本当は毎月いくら足りないのかが、誰にも見えなくなってしまうのです。 たとえば、300万円足りない月が年に4回あれば、1年で1,200万円。3年続けば3,600万円です。決算書には役員借入金が3,600万円たまり、そのぶん社長の貯金は減っています。しかもそのお金は、社長が給料から税金や社会保険料を払ったあとに残した、大切なお金です。会社の足りない分は消えたのではなく、社長の家計に移っているだけなのです。

「支払日の前日に、自分の口座から会社へ振り込んでいる」「会社に入れたお金が、いつ戻ってくるかわからない」「家族に、会社のお金の話ができない」というのは、会社の足りないお金を、社長ひとりで背負っている典型的な症状です。

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8. 支払いを待ってもらって、なんとか回している

仕入れ先に「今月の支払いを、来月にしてもらえないか」と頼む。社会保険料の支払いを少し待ってもらう。社長の給料支払いは後回しにしている。こうして支払いを先にのばしながら、なんとか月末を越えているケースです。

払う約束をしたのに、まだ払っていないお金は、決算書では「買掛金」や「未払金」として残ります。社長の給料も、払うと決めた額を払っていなければ「未払金(未払役員報酬)」です。支払いを待ってもらえば、一時的には助かります。

一見、うまく乗り切れたように見えます。しかし、待ってもらったお金は消えたわけではありません。次の月の支払いに、上乗せされているだけなのです。 たとえば、毎月300万円足りない会社が、そのたびに300万円を次の月へ回したとします。のばした支払いは、1か月目で300万円、2か月目で600万円、3か月目で900万円とたまっていきます。そして、ある月にまとめて払えなくなります。さらに、支払いが遅れる会社だと知られると、取引の条件がきびしくなることがあります。税金や社会保険料は、遅れた分だけ余分なお金(延滞税など)もかかります。

「また今月も待ってもらおうと考えている」「自分の給料は後回しで、何か月も受け取れていない」「取引先からの電話に出るのが、こわい」というのは、足りないお金を、先の月へ送り続けている典型的な症状です。

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9. 不安で夜も眠れない

月末が近づくと、夜中に目がさめて、支払いが不安になる。お金のことを考えて、眠れない夜が続くケースです。会社の大きさや業種に関係なく起こります。

通帳の残高を毎日確かめるのは、お金を中心に会社を見る経営の基本で、とても良いことです。大事なのは、その残高を見て、何を判断しているかです。多くの社長は、残高が多ければ安心し、少なければ不安になります。

ところが、通帳の残高は「今日まで」の結果です。来週、来月に出ていくお金は、そこには映っていません。 たとえば通帳に3,000万円あっても、月末に給料・仕入れ・返済・税金で3,500万円が出ていき、入金が月末に間に合わなければ、500万円足りません。反対に、残高が少なく見えても、月末の前に大きな入金があれば間に合うこともあります。どちらなのかは、通帳を見ているだけではわかりません。実は、社長の不安を大きくしているのは、「お金が足りないこと」よりも、「足りるかどうか、わからないこと」なのです。

「残高を見るたびに、気持ちが上がったり下がったりする」「支払日が近づくと、落ち着かない」「来月いくら残るかと聞かれても、答えられない」というのは、お金の先行きが見えていない典型的な症状です。

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10. 利益はあるのに、現金が増えない

決算書を見ると利益はしっかり出ているのに、通帳のお金は増えていかない。むしろ、年々現金が減っている。これまでの9つの症状が、決算書の上でひとつにまとまって表れるケースです。

利益は、売上から経費を引いた「計算の上のもうけ」です。現金は、実際に口座にある「使えるお金」です。この2つは、同じ動きではありません。

一見、利益が出ていれば、お金も増えているように思えます。しかし、利益の計算には入らないお金の出入りがあります。 借入の元金の返済は経費になりません。売掛金や在庫が増えた分、設備を買った分も、その年の経費には全部は入りません。 たとえば年商3億円で、税引前の利益が1,000万円の会社。税金をおおまかに3割とすると約300万円で、残りは約700万円。減価償却費の200万円は、お金が出ていかない経費なので、足すと約900万円。ここから借入の元金を年1,000万円返すと、この時点で100万円足りません。 さらに、消費税があります。消費税は、利益の計算には入りません。3でお話ししたように、この会社が納める消費税は年1,500万円。預かった消費税を、ふだんの支払いに使ってしまっていれば、足りない額は一気に1,600万円にふくらみます。利益は1,000万円出ているのに、お金は1,600万円足りない。これが「黒字なのに苦しい」の正体です。

「決算書は黒字なのに、なぜ苦しいのかわからない」「利益が出た年ほど、お金が足りなくなる」「利益と通帳の残高の動きが、まったく合わない」というのは、利益と現金のズレに気づいていない典型的な症状です。1から9の症状は、どれもこのズレから生まれています。

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次の一歩

資金繰りの問診へ

いくつ、あてはまりましたか。

1つでもあてはまれば、それは会社のお金が出している合図です。大事なのは、あてはまった数よりも、その症状がどこから来ているかです。10で見たように、1から9の症状は、どれも「利益と現金のズレ」から生まれています。原因がわからないまま、目の前の支払いだけをしのいでいると、同じ苦しさがまたやってきます。

10の症状は、ばらばらに見えても、直す方向は大きく3つにまとまります。

  1. お金の流れを整える(症状9・8・3・4・6)
  2. お金の置き場所を整える(症状1・2・5・7)
  3. 現金から、もうけを見直す(症状10)

それぞれの直し方は、次の記事で説明しています。資金繰りの問診:10の症状と、それぞれの直し方

ただ、どこから、どう直すかは、会社ごとにちがいます。同じ症状でも、原因や、動かせるお金の大きさがちがうからです。

直す順番の考え方は、次の記事で説明しています。

資金繰り改善は、どの順番で進める?

当社のスローガンは「キャッシュベース経営で、経営の選択肢を最大化する。」です。利益を出すことと、お金を残すことを、いつも一緒に考えます。

「うちの会社は、どの症状にあたるのか」「どこから直せばいいのか」を、30分のオンライン相談で一緒に確かめます。無料で、資料もいりません。

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株式会社Issue-Consulting(イシューコンサルティング)/代表 上野貴司(中小企業診断士)/埼玉県入間市

上野 貴司
株式会社 Issue-Consulting 代表取締役/中小企業診断士

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